診療報酬
社会保障費の抑制策について、諮問会議の民間議員が医療・介護の高コスト構造を是正するための5ヵ年計画を2006年度内に策定するよう柳沢厚生労働相に求めました。必要なサービスを確保しながら給付を抑えるのが狙いで、社会保障費の抑制へ、診療者の負担増だけに頼らずにコスト削減に軸足を移す試みなのだそうです。
諮問会議の民間議員の提案は、医師に支払う診療報酬の見直し、医療の重複検査の是正、介護施設経営への参入促進の3つが挙げられています。
医療の重複検査の是正に関しては、患者一人一人が受けている検査内容を開示しなければならないことなどから、個人情報保護上の配慮が必要になるでしょう。介護施設経営への参入促進にも、医療や介護などの分野に過度に市場原理を持ち込むことで、かえってサービスが低下する危険性も見え隠れします。あくまで利用者を主体に考えたサービスを確保するためのシビルミニマムの設定などが必要でしょう。
しかし、今回の3つの提案の中でも、特に医療報酬の見直しは、慎重に行う必要があると思います。今回の提案では具体策として、同じ病気に対して支払う金額を一定額に固定する「包括支払い」と呼ばれる制度を導入することで、過剰な検査や投薬を避けるとしています。確かに、病院に行ったら大量の薬を処方され、使い切る前に完治してしまった経験をしたことのある人は多いでしょう。この制度の導入で、風邪のような軽い病気の場合は、ある程度無駄を減らす効果が期待できるのかもしれません。
しかし、たとえ病名が同じであっても、実際の重篤さの度合いにはかなりの個人差があるはずです。また、治療にかかる時間や治療方法も、年齢や性別によって大きく変わってくるのではないでしょうか。単に病名が同じというだけで、一律の検査や投薬基準を持ち込むことは、一人ひとりに合った最適な医療行為が行われにくくなる危険性をはらんでいるように思えてなりません、
また、その包括支払いの基準をどのあたりに設定するかによっては、規定の医療だけでは不十分な人の場合、健康保険が適用されない自由診療を受けなければならないケースが出てくることが考えられます。自由診療を受診するだけの経済力が無い人には、その人が必要とする最低限の医療行為すら提供されないという最悪ケースも出てきそうです。
その一方で、本来それほどの手当が必要のない人に対してまで、過度の医療が提供される逆効果が発生することも考えられます。
医療費を抑制しなければならない理由の背景には近年の社会保障費の高騰があり、更にその背後にはこの国の財政赤字の問題が横たわることは理解できます。しかし、医療はあくまで人の命にかかわる問題です。医療費をコントロールする目的のために一律の医療基準を導入する考え方には違和感を覚えます。
長年にわたる行政の不作為によって積み上げられた財政赤字の解消のために、人間の命の代償を求めるような愚かなことは、何としても避けなければなりません。昨今、地方行政では知事が関与する談合が依然として横行していることも相次いで明らかになっています。私たちの税金が、談合や癒着によって不当につり上げられた公共事業費に吸い取られていたわけです。
安倍内閣は北朝鮮による拉致の問題を国民の命の問題だとして、最重要課題に据えている政権のはずです。医療の一律化という、国民一人一人の命に関わる問題に手をつける前に、まだやることがたくさんあるように思えてならないのは私だけでしょうか。
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